「利益率20%で出す」と決めたとします。 ところが、その20%をどう計算するかで、同じ商品でも売価は数千円変わります。 しかも売れたあとに手数料が引かれるので、 画面上の利益と、実際に口座に入る金額は一致しません。 この記事では、価格を決めるときに何をどの順番で足し引きするのかを整理します。 2026年10月以降に予定されている手数料改定の影響にも触れます。
まず、原価を確定させる
価格の話をする前に、何を原価とみなすかを決めておく必要があります。 ここが曖昧なままだと、あとの計算がすべてずれます。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 商品代金 | 外貨の場合、出品時点では実レートが分かりません。見込みレートで置きます(下で触れます) |
| 海外送料 | 1商品あたりに割り付ける。まとめ買いで無料になる場合、その分をどう配分するかを先に決めておく |
| 関税・輸入消費税 | 誰が負担するかで扱いが分かれます(下で触れます) |
| 国内送料 | 購入者へ送る分。出品価格に含めるか、別途受け取るかで、手数料のかかり方も変わります |
為替は「見込み」で置くしかない
BUYMAは受注してから買い付けるのが基本の流れです。 つまり出品して価格を決める時点では、実際に引き落とされるレートは存在しません。 カード会社のレートはその日の公示レートとも一致しないので、あとから確定します。
できるのは、直近のレートに一定の幅を乗せて置いておくことです。 何%乗せるかは、扱う通貨の値動きと、出品から受注までの期間で決まります。 為替が大きく動いたときに出品中の価格を見直すのは、この見込みがずれたときの手当てにあたります。
関税は、原則として購入者の負担
ここは誤解されやすいところです。BUYMAの説明では、 海外から輸入した場合の関税は原則として輸入者(受取人)=購入者が支払うものとされています。 つまり、何もしなければ関税は出品者の原価ではありません。
出品者側の原価に入るのは、次のような場合です。
- 関税を元払いで発送する場合。出品者が先に負担するので、原価に入ります
- 関税の発生時に返金に応じる設定にしている場合。実際に請求されたときに負担が生じます
- 国内から発送する場合。通関済みなので購入者に関税は発生しませんが、その分は仕入れ時に出品者が払っています
購入者負担のまま出品しているのであれば、関税を原価に足す必要はありません。 足せばその分だけ価格が上がり、比較されたときに不利になります。 逆に負担する設定にしているなら、品目ごとに税率が違うため、 1件ずつ正確に出すのは手間です。 高額品や税率の高い品目でなければ、利益率に幅を持たせて吸収するほうが実務的だと思います。
「利益率20%」が3通りに割れる
原価が決まったとして、そこから売価を出します。 ここで、同じ「20%」という言葉が3つの違う式になります。
原価20,000円、目標20%として計算してみます。 成約手数料は7.7%(後述)、端数は100円単位で切り上げています。
| 考え方 | 式 | 売価 |
|---|---|---|
| 原価に20%を上乗せする | 原価 × 1.20 | 24,000円 |
| 売価の20%を利益として残す | 原価 ÷ (1 − 0.20) | 25,000円 |
| 手数料を引いても20%残す | 原価 ÷ (1 − 0.20 − 0.077) | 27,700円 |
同じ「20%」なのに、上と下で3,700円の差があります。 どれが正しいという話ではなく、自分がどの意味で言っているのかを自覚しているかという話です。
手数料を引くと、何が残るのか
BUYMAでは、取引が成立して代金が振り込まれる際に成約手数料が差し引かれます。 公式ガイドによれば、商品価格の5.5%〜7.7%(税込)です。
ここで注意したいのは、幅の下のほうは誰でも使えるわけではないことです。 一般の出品者(パーソナルショッパー)は7.7%で、商品や売上によって変わりません。 売上に応じて下がる段階料率はショップ登録ユーザー向けの制度で、 直近3か月の売上が300万円以上で7.15%、600万円以上で6.6%、 1,500万円以上で6.05%、3,000万円以上で5.5%と定められています。 「売っていればそのうち下がる」というものではありません。
そして手数料は、価格を決めるときではなく売れたあとに引かれます。 先ほどの3つの式で、実際に手元に残る額を並べるとこうなります。
| 考え方 | 売価 | 成約手数料 | 手数料控除後 | 利益 | 売価に対する利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 原価に20%上乗せ | 24,000円 | 1,848円 | 22,152円 | 2,152円 | 9.0% |
| 売価の20%を残す | 25,000円 | 1,925円 | 23,075円 | 3,075円 | 12.3% |
| 手数料込みで20%残す | 27,700円 | 約2,133円 | 25,567円 | 5,567円 | 20.1% |
※ 振込手数料は別途かかります(後述)。 成約手数料の1円未満の端数処理は公式に記載がないため、金額は概算です。
上乗せ式の20%が9%に見える理由
いちばん上の式が9.0%になっていることに、違和感を持たれたかもしれません。 これは分母が違うからです。分けて見ます。
- ×1.20 を使う人が意図している20%は、原価に対する割合です。利益4,000円 ÷ 原価20,000円 = 20%。意図どおりです
- これを他の2つと同じ土俵、つまり売価に対する割合に直すと、4,000円 ÷ 24,000円 = 16.7%になります
- そこからさらに手数料1,848円が引かれて、9.0%まで落ちます
つまり、20%が9%になったのではありません。 定義の違いで16.7%になり、手数料で9.0%になったということです。 上乗せ式が間違っているわけではなく、 薄く出して売れやすさを取る判断もあります。 問題になるのは、20%残っているつもりで9%しか残っていないという状態のほうです。
2026年10月以降、定額の手数料が加わる予定
2026年9月2日、BUYMAから成約手数料の改定が告知されました。 これまでの定率の手数料に加えて、価格帯ごとの定額手数料が発生します。 対象は全出品者です。
| 商品価格(税込) | 定額成約手数料(税込) |
|---|---|
| 〜9,999円 | 55円 |
| 10,000〜19,999円 | 110円 |
| 20,000〜99,999円 | 165円 |
| 100,000円〜 | 220円 |
適用は10月1日以降の予定で、正式な日付は開始の2週間前を目処に案内されるとされています。 この記事の執筆時点では確定していませんので、実際の運用は公式の告知でご確認ください。
金額としては小さく見えますが、価格設定の式に影響します。 定額なので割り算では吸収できず、原価側に足す必要があります。 3つ目の式は、改定後はこうなります。
| 式 | 売価 | 売価に対する利益率 | |
|---|---|---|---|
| 改定前 | 20,000 ÷ (1 − 0.20 − 0.077) | 27,700円 | 20.1% |
| 改定後・式そのまま | 20,000 ÷ (1 − 0.20 − 0.077) | 27,700円 | 19.5% |
| 改定後・式を直す | (20,000 + 165) ÷ (1 − 0.20 − 0.077) | 27,900円 | 20.0% |
1件あたり165円、率にして0.6%ぶんです。 1件では小さくても、件数が増えれば効いてきます。 式に定額分を足す場所を、今のうちに決めておくといいと思います。
振込手数料は、率ではなく定額
成約手数料とは別に、代金を口座に振り込む際の手数料がかかります。 こちらも定額です。
| 振込先 | 金額 |
|---|---|
| 国内口座(楽天銀行) | 220円(税込) |
| 国内口座(その他) | 385円(税込) |
| 海外口座 | 1,000円(非課税) |
これは取引ごとではなく振込ごとにかかります。 公式ガイドには、複数の入金でも同じ振込日にまとめれば1回分で済むとあります。 売価に上乗せして回収しようとするより、まとめて依頼するほうが素直です。
購入者側にも手数料がかかっている
出品者側の話ではありませんが、価格を考えるうえでは知っておいたほうがいい点です。 購入者は商品価格の5.5%(税込)を決済システム利用料として別途支払います。
27,700円で出品した商品は、購入者からは約29,200円+送料として見えていることになります。 同じ商品が並んだときに比較されるのは出品価格のほうですが、 購入者が実際に払う総額はそれより上だ、という感覚は持っておいて損はありません。
※ 出品者側の料率の下限(5.5%)と購入者側の利用料(5.5%)は数字が同じですが、別のものです。
送料を価格に含めるかどうか
国内送料を出品価格に含めるか、別途受け取るかは、手数料のかかり方に関わります。
出品価格に含めれば、その送料分にも成約手数料の料率がかかります。 一方、別途受け取る送料が手数料の対象になるかどうかは、 公式ガイドに明記がなく、解説記事によっても書かれていることが違います。 ここは断定を避けたいところです。 実際にどう計算されているかは、ご自身の入金明細で確認するのが確実です。
端数をどう処理するか
計算式に原価を通すと、27,662円のような中途半端な数字が出ます。 これをそのまま出すか、丸めるかを決めておくと、毎回悩まずに済みます。
- 切り上げる。100円単位や1,000円単位に切り上げれば、利益が計算より下回ることはありません
- 切り下げない。見栄えのために下げると、その分がそのまま利益から消えます
- 切り上げた分を、値下げ依頼への余白として持っておく考え方もあります。お問い合わせで価格の相談を受けたときに、下げられる幅があらかじめ確保されている状態になります
どれを選んでも構いませんが、商品ごとに気分で変えると、 あとから「なぜこの価格にしたのか」を追えなくなります。
エクセルで管理している場合
価格計算をスプレッドシートでやっている方は多いと思います。 それ自体は合理的です。式を1か所に書いておけば、全商品に同じ基準が適用されます。
3つ目の式(手数料を引いても目標利益率を残す)を、改定後の定額分まで含めて書くとこうなります。
| セル | 内容 |
|---|---|
| A2 | 原価(仕入+海外送料+負担する場合の関税) |
| B2 | 定額成約手数料(改定前は 0) |
| C2 | 目標利益率(0.20) |
| D2 | 成約手数料率(0.077) |
| E2 | =CEILING((A2+B2)/(1-C2-D2), 100) |
定額分は価格帯で変わるので、厳密にやるなら いったん仮の売価を出してから帯を判定し、もう一度計算し直すことになります。 帯をまたぐ商品が少ないなら、扱う価格帯の定額を固定で入れておくだけでも足ります。
ただ、手間が残るのは計算そのものではなく、その前後です。
- 仕入れ元から価格を写して、外貨なら円に直す
- シートに入れて、出てきた数字を出品フォームに戻す
- 為替が動いたら、出品中の商品を見直す
1商品なら数十秒ですが、往復が発生するぶん、件数に比例して増えていきます。 式が固まっているのなら、写す作業のほうを減らす余地があります。
積み上げた価格が、相場を超えたら
ここまでは原価から積み上げる話でしたが、BUYMAでは同じ商品が並んで比較されます。 計算した価格が相場より明らかに高くなることもあります。
そのときの選択肢は、利益率を下げて合わせるか、出品しないかのどちらかです。 出さないという判断も価格設定のうちだと思います。 基準の式を持っていれば、「いくらまでなら下げられるか」がすぐ出るので、 その判断自体は速くなります。
まとめ:式を1つ選んで、固定する
- 原価に何を含めるかを先に決める。関税は原則として購入者負担なので、負担する設定にしていなければ原価に入れない
- 為替は出品時点では確定しない。見込みレートに幅を持たせて置く
- 「利益率20%」には3つの意味がある。どの式を使っているかを自覚する
- 成約手数料は5.5〜7.7%(税込)。ただし一般の出品者は7.7%で、下がるのはショップ登録ユーザーの段階料率
- 2026年10月以降、価格帯ごとの定額手数料が加わる予定。定額は割り算で吸収できないので、原価側に足す
- 振込手数料も定額。同じ振込日にまとめれば1回分で済む
- 端数は切り上げに寄せる。切り上げた分は値下げ依頼への余白にもなる
価格設定でいちばん危ないのは、計算が難しいことではなく、 基準がぶれていることに気づかないまま件数が増えることだと思います。 式を1つ選んで固定してしまえば、あとは同じ処理を繰り返すだけになります。
YOHAKUは、この計算を出品作業の中に組み込んだChrome拡張機能です。 上乗せ式・利益率確保式・成約手数料を含めた式の3つから選び、 利益率、手数料率、負担する場合の関税の見込み額、国内送料、端数の丸め方を設定しておくと、 仕入れ元の価格から売価を計算して出品フォームに入力します。 外貨の円換算も同じ流れで処理します。
2026年10月に予定されている定額成約手数料には、正式な適用日の告知に合わせて対応します。 お使いの仕入れ元が対応できるかどうかは、事前にご相談ください。